詩人から見た写真その1(谷郁雄)

写真出版.com

2019/07/16

詩人から見た写真その1(谷郁雄)

詩人:谷郁雄

ぼくは写真家ではなく詩人なのですが、ぼくくらい写真家のお世話になった詩人はいないと、自信をもって言えます。

その一例をご紹介するために、ここに一冊の本を取り上げたいと思います。本のタイトルは『自分にふさわしい場所』といいます。

『自分にふさわしい場所』 谷郁雄・言葉/ホンマタカシ・写真

……本当になんでもない、
たいていの人が退屈だと思ってしまいがちな
毎日の、なんの変哲もない時間、ときには醜悪だと思って
しまいそうになる街の光景を、谷さんは、一瞬にして
切りとって、その輝かしく愛しい断面を見せてくれる。

—―――帯コメント 角田光代

これは、ぼくが写真家とのコラボレーションで作った最初の本ですが、既に絶版になっており、世の中には流通していません。
ご興味のある方は、ネットで中古品を探してみてください。

写真家を目指している方なら、一度くらいは“ホンマタカシ”という写真家の名前を
聞いたことがあるかもしれませんね。

彼は90年代に東京郊外の風景を撮影した写真集を刊行し、鮮烈なデビューを果たしました。

その人気写真家のホンマタカシさんとのコラボレーションだったこと、さらには寄藤文平さんの装丁がカッコよかったこともあり、何回も版を重ねて、詩集としてはよく売れました。

この本がきっかけとなり、詩人谷郁雄の名前も以前より多くの人たちに知られることになり、同時に、さまざまな写真家とのコラボシリーズが始まることになりました。

ぼくはこれまで多くの詩集を作ってきましたが、写真家とのコラボレーションによる系列の作品としては、この『自分にふさわしい場所』が原点になっていると言えます。

ぼくは、若い頃は写真家になりたいと思っていたくらい写真が好きなのですが、思いつくまま、まずは1回目の記事を書き始めてみました。

これからも写真についてあれこれ自分なりに考えをめぐらせてみたいと思います。
何が飛び出すか、自分にも予測不可能ですが(笑)

文章/谷郁雄

【谷郁雄:Profile】
1955年三重県生まれ。同志社大学文学部英文学科中退。大学在学中から詩作を始める。
90年『死の色も少しだけ』で詩人デビュー。
写真家とのコラボレーション詩集も数多く刊行されている。
作品は、合唱曲『できそこないの天使たち』になったり、「どこにもない木」が中学校の教科書の巻頭詩として掲載されたりしている。
詩集に『愛の詩集』、『透明人間・再出発』、『バナナタニ園』、『大切なことは小さな字で書いてある』ほか多数。

“谷郁雄オススメ詩集”

『バナナタニ園』

詩 谷郁雄
写真協力・まえがき 吉本ばなな
装幀 寄藤文平+鈴木千佳子
絵 寄藤文平

私たちが子どもの頃に思っていたいちばん大切なこと、

大人には見えなかったけれど自分にはよく見えていたことが、
そのままの形で保存されて谷さんの詩の中には入っている。

—―――吉本ばなな「まえがき」より

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『大切なことは小さな字で書いてある』

普段から詩に親しんでいる人も
詩はちょっと苦手という人も、
コーヒー片手にそれぞれの「詩の時間」を見つけてほしい。
詩に飽きたら、また日常へと戻っていけばいい。
そのとき、少しだけ、日常が新鮮に感じられるはず。

※全国学校図書館協議会選定図書

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