レポート
2021/05/28
大賞受賞作品「A complicated city」
第4回写真出版賞で多数の応募のなかから大賞に輝いたキセキミチコさんの作品「A complicated city」。
香港の混乱と、そこから垣間見える日常の記録をまとめた作品です。
この作品について、審査員を務めた青山裕企氏・則武弥氏・松崎義行氏、そして当社代表の城村典子が審査後に話していた非公開トークを、こっそり公開します。
どのような視点でこの作品が受賞に輝いたのか、ぜひ応募の参考にしてください。
※ 審査員は計6名おり、このメンバーが全員ではありません。また、このトークは正式な講評ではないので、あくまで”楽屋裏トーク”としてお楽しみください。
青山裕企(Mr.Portrait / 写真家)
『ソラリーマン』『スクールガール・コンプレックス』『少女礼讃』など、 “日本社会における記号的な存在”をモチーフにした作品を制作している。 本賞では第1回から特別審査員を務める。
ウェブサイト https://yukiao.jp
則武弥(デザインディレクター)
ペーパーバック代表。CI、VI、教科書のデザイン他、「典型プロジェクト」でのプロダクト開発、詩のデザインレーベル「oblaat」、「東京ピクニックラブ」で活動。グッドデザイン賞他受賞多数。本賞では第1回から審査員を務める。
ウェブサイト https://www.paperback.jp/
松崎義行(出版社みらいパブリッシング代表取締役 / 編集者 / 詩人 / 作詞家)
本賞の提携出版社みらいパブリッシングの代表取締役。15歳で第一詩集「童女 M-16の詩」を刊行。以来、詩、作詞、エッセイ、編集など出版や表現に関わる多数の活動を行っている。本賞では第1回から審査員を務める。
城村典子(出版プロデューサー / スプリングインク代表取締役)
講談社、角川学芸出版などの出版社に勤務した後、2012年に独立。書籍編集、角川フォレストレーベル立ち上げと編集長などの業務のほか、事業部の立ち上げ、出版社創設など、出版事業全般に渡る業務を30年経験。スプリングインク株式会社代表取締役として、コンテストの運営も行う。本賞では第1回から審査員を務める。
青山:
これは、圧倒的でしたね。プリントも丁寧で。この作品はカラーコピーの手法で白黒写真をプリントしていると思うのですが、通常、そうすると白黒写真の良さが消えてしまいがちなのですが、今回はドキュメンタリーな雰囲気とマッチしていました。
作品をじっくり眺める特別審査員の青山裕企氏
松崎:
僕は、こういう作品を待っていました! という感じで、受け取ったとき本当にうれしかったです。踏み込んで撮っていて、見ごたえがあります。彼女のすごいところは、抜群の、最適なタイミングで香港に入っていることですよね。
則武:
香港の日常ではなく、ダイレクトに騒動の最中を撮っている。ジャーナリストでもプレスパスが効かない世界で、真面目に撮って真面目にプリントしているのがいいなと思いました。今必要なのはこういうタッチのものかなと。
応募作の一部
青山:
相当プリントがいいですよね。そこもポイントです。
則武:
プレゼンテーションを含めて、気持ちいいですよね。見ようという気にさせられる。
送られてきた写真は、静謐な雰囲気の黒い箱に入っていました
松崎:
僕は、どうしてカラーじゃなくて白黒なのかなと思いました。出版するときはカラー写真を混ぜてもいいのかなと個人的には思いますが、どうでしょうか。
青山:
カラーになると情報が増えますが、この焼き方がいいので、それをそのまま生かすのがいいのではないでしょうか。
城村:
この時期に香港に行って激動の中で撮ったわりに、非常に冷静な写真を撮られていて、確かな意思と技術を感じました。白黒にしたのは、余計な情報を入れないほうが真実が際立つという意図があったのかな。出版されるのが非常に楽しみです。
モノクロのなかに真実が際立ちます
以上、第4回写真出版賞で多数の応募のなかから大賞に輝いたキセキミチコさんの作品「A complicated city」ついての楽屋裏トークでした。
キセキミチコさんの作品は、大賞の特典として書籍化されることが決まっています。
この作品の魅力を、編集を通してどう高めていけるか。どんな本に仕上げていくか。
ここからが出版の醍醐味です。
キセキさんには、ぜひそれを味わっていただきたいですね。
当社も、本の完成を今からたのしみにしています。
第4回の結果は、こちらの結果発表のページをご覧ください。