インタビュー記事
2020/11/25
第2回写真出版賞で、大賞&青山裕企賞をダブル受賞した、中国出身の写真家バオメイさん。
受賞作をまとめた写真集『have fun』で日本デビューを飾りました。
特定の居場所を持たず、風のように世界を旅する彼女。
現在、中国雲南省の沙溪という町に滞在しているという彼女に、オンラインでインタビューを行いました。
―今、どこにいるのですか?
今は、中国雲南省の大理の近くにある、沙溪という町にいます。
― 沙溪はどんな町ですか?
わたしはこの小さい町が大好きです。今は秋。田んぼの色がゴールドになりました。小道に沿って歩いていると、運がいいときは黄色の葉っぱの木が見えます。ここの雲は常に綺麗で、天気のいい日は絶対に散歩に行きます。雨の日は、雨を見ながら室内でぼんやり過ごします。私の体が、ここは第二の故郷だと言っているようです。
― 精神的に、コロナウイルスの影響を受けたりしましたか?
影響はほとんどないです。それはわたしの生き方と稼ぎ方のせいかもしれないけど。でも、遠くにいる友達に会えないので、会いたいと思うことはあります。
― 写真出版賞に応募しようと思ったきっかけは?
東京に住む友人の洪十六(中国出身、第1回写真出版賞で青山裕企賞を受賞)から推薦されました。感謝します! わたしはあまり写真のデータを整理するのが好きじゃないのですが、彼が実物をそのまま送っても大丈夫だと教えてくれました。作ったばかりの写真集のダミーを洪に送って、彼が代理で応募手続きをしてくれたんです。
― 大賞&青山裕企賞をダブル受賞と聞いたとき、どう思いましたか?
自分の写真が認められて、嬉しかったです。もともとコンテストには興味がなく、紹介されなかったら絶対に応募していなかったので、ラッキーでした。でも、私が大賞を獲ったせいで、一緒に応募した洪は優秀賞になってしまったので、こんど彼においしいものをおごらないといけないですね。
― 受賞作をまとめた写真集『have fun』を初めて受け取ったときの印象は?
「あ! これが日本のデザインか!」というのが第一印象でした。カバーがとても綺麗です。使われている写真はわたしの自撮りですね。色味も素晴らしいと思います。「バオメイごめん」という言葉も、とてもかわいいです。とても”have fun”。
紙を何種類も使っていて、中を読むときもサプライズがありました。編集も大胆だし、気楽さがあるし、昔、漫画を読んでいたときに感じたような心地を感じました。
写真集『have fun』。カバーの後ろにちらりと見える本体の黄色がアクセント
中身の一部
数種類の紙を使い、さまざまな手触りを感覚的に楽しめるようになっている
― この写真集のテーマを教えてください。
「have fun」つまり「楽しむ」ことは、わたしが普段から一番重視していることです。たとえば、わたしが写真を撮るとき、いい写真が撮れているかどうかはあまり大事ではないんです。「have fun」が一番大事なこと。そしてやっぱり、「have fun」のときに撮った写真はいつも、大好きなものが多いです。
ときには自身も写真の一部にしてしまうバオメイさん
「まず生活を選び、それから撮影を選ぶ(live first, then photos)」は彼女の信条
― バオメイさんは、どうして風のように旅を続けているのですか?
「風のように」と言ってくれてありがとう。風の旅には理由がいらない。とても自由です。
― 次の目的地は決まっているのですか?
寒い冬が来たら、海南島に行きたいです。海の街に戻りたい。
― 日本のファンに向けて、何かメッセージがあればお願いします。
最近、日本の映画を何本も見て、日本に行ったときのことを思い出しました。両手をポケットに入れて、喫茶店やコンビニがある街を散歩したいです。写真を撮らなくても大丈夫。そして居酒屋に行って、友達とお酒を飲みたい! 日本にいるみなさん、どうかお大事に!
〈おまけ〉
バオメイさんが沙溪で撮った写真をたくさん送ってくれました。
見ると旅に出たくなるので気をつけて。
● バオメイさん プロフィール
1991年中国広東省生まれ。2015年から写真をセルフメディアとした活動を開始。特定の居場所を持たず、世界中を旅しながらアート活動を行う。以後、上海や北京などで数々の写真展を開催。写真集に『私の遠くからの友たち』『見えない私』『Living the dream』『宝妹写真館』。
Instagram @zhongbaomei
● 彼女の魅力が詰まった写真集『have fun』の詳細はこちら