過去に写真出版賞に応募した方々に、これから応募する人へのメッセージをいただきました。
圓井誓太さん(第7回写真出版賞)
私たちの世代にとって、写真はデジタル上で見ることが当たり前の存在です。
カメラロールを振り返れば、10年前の写真さえ瞬時に見ることができます。
もはや写真は写真家だけのものではなく、いつでも、どんな時でも、誰でも、が当たり前の存在となりました。
そんな、写真家とそうでない人々の境界が曖昧になっている昨今で、写真家と名乗っている私は何を持って写真家と名乗ることができるのか。
そのひとつの解に写真集の出版が挙げられると考えました。
自身の写真集が製本され、書店に並んだ姿を見た時は生まれて最も感動した瞬間でもありました。
また、本を出版するという行為は自身が生きていた証を後世に残せる、非常に貴重な体験であるとも言えます。
何十年、何百年先も自身の写真集を見て、誰かの感情を動かす事が出来たら、これほど嬉しい事はないと思います。
〈 写真出版.comからの質問 〉圓井さんの肩書きは何ですか?
「光」を切り取る人。
工藤清さん(第6回写真出版賞)
今や、世界中の超一流作品がデスクトップにまで溢れている。
そして人は眼ばかりがこえ、創り出すことに臆病になってしまうのだ。
かつてイタリアへ絵画・彫刻を学びに行った留学生が、街に溢れる先人の作品群を見て挫折、イタリア料理人になって帰ってきたこともあったという。
しかし、ここで聞いてほしい話がある。
かつて仲良しのプロカメラマンの事務所にお邪魔したときの話である。
まだ写真がフイルムの時代だったのだが、彼が上がってきたばかりのポジを苛立たしくゴミ箱に捨てていた。
何気なく、その写真を拾いあげ見ると、白くすっ飛んだ走行中のレーシングカーだった。
現像が一発勝負の時代に、彼にとっては許せないくらい露光オーバーの失敗作だったのだろう。
しかし、私は身震いがした。
時速300キロを超え死の際をゴールへ向け突っ走るレーサーは、こんな感覚のゾーンに入っていたのではなかったのか? と。
その後、その写真を全面に使ったポスターが街に掲出されたのだ。
単にテクニック論をいっているのではない。
被写体の暮らしぶり、精神状態まで写し取る気概を私は理想とし、感動できるココロを持ち続けたいと思っているのだ。
創り出すことは苦しいことかもしれない。しかし失敗や恥を恐れてはいけない。
創り続けることで、生まれることもあるのだ。
あえて言いたい「臆するなアマチュアリズム」。
プロもアマも少年少女時代の純粋な好奇心と心動かせるアンテナを持ち続けたら何かが生まれるだろう。
今回のコンテストは、自分の世界観を発表できるいい機会だ。
あなたのココロを動かしたものを、是非ぶつけてほしい。
夢中になれる写真というツールを見つけた我々の幸せを、共にかみしめたい。
〈 写真出版.comからの質問 〉工藤さんの肩書きは?
あえて言うなら「感動伝道師」
宗教的な意味合いではありません。地球をともに歩む多様な生物=鳥、昆虫など弱者への観察から感じるいとなみへの愛、畏敬の念、感動を伝えること。また、おじいちゃんの伝言として次世代に、たぐいまれな地球の自然環境への慈しみを、デジタルの時代だからこそ伝えていきたいからです。
古賀直行さん(第9回写真出版賞)
自分は、Instagramで投稿を続けているn_cogaです。
ある日、そのInstagramの投稿を見たという出版社の方からDMが来ました。「写真出版賞」というコンテストに応募を勧めるものでした。
怪しい話かなと思いながらも大賞に選ばれれば写真集を無料で出版できるというのはとても魅力的なコンテストに思えました。
そして以前から、いつかは紙の写真集を出すのが夢でしたので、締め切りまで猶予の無いタイミングでしたが応募してみることにしました。
写真集が本屋に並べば「写真家」を名乗っても良いように思えたからです。
締め切りまで2週間という状況でしたが、Instagramに投稿した写真はかなりの数があり、最もリアクションがあった「小さなカメラマンシリーズ」のために撮った写真の数も応募点数の上限枚数を超えていましたので、その中から絞り込んでストーリー性を持たせるためにキャプションを編集し直しました。
ストーリー性を持たせるため不要な作品を選別するのは辛い作業でしたが、幸いにも「優秀賞」を頂くことができました。
「大賞」には至りませんでしたが、その後出版社からオファーがあり、何回かの編集会議を経て写真レクチャー本として出版することになりました。
今は、「小さなカメラマン」の写真と撮影にまつわるエピソードを中心に写真を学ぶレクチャー本となるよう編集を行っています。
この度、出版に向け歩みだすことができたのもこの「写真出版賞」への応募がきっかけでした。
多くの写真愛好家にとって自分の本を出版することは夢だと思いますが、現実には何かきっかけがないとなかなか着手できないことと思います。
「写真出版賞」への応募は、夢に向けた扉を開く第一歩です。
〈 写真出版.comからの質問 〉古賀さんの肩書きは何ですか?
数年前に会社を退職しました。だから今は肩書はありません。現役時代は、社内で会報誌の写真係でしたが、今は、Instagramに投稿を続けています。高校生の頃から写真を始め40年以上も1日の時間のほとんどを写真に費やしています。なので肩書きを聞かれればおこがましいと思いつつも「写真家」と名乗りたいものだと思います。紙の本が本屋に並べば「写真家」を名乗っても良いように思っています。
北山建穂さん(第3回写真出版賞)
以前から私には、地元の栃木県日光市の四季折々の美しい風景写真をもとに、日本の伝統色を紹介する「色図鑑」を作成してみたいという夢がありました。
しかし、出版への道はとても険しく、非常に狭き門です。原稿持ち込みを断る出版社も多い中、私に残された選択肢は、多額の経費を必要とする自費出版以外にありませんでした。
そんな折、たまたまインターネット上で見かけた広告で『写真出版賞』の存在を知りました。これは自分にとってまたとない僥倖でした。
それから締切までの1ヶ月弱の間、仕事が終わると寝る間も惜しんで写真の選別や伝統色の選定などの作業に追われました。
その努力の甲斐あってか、『四季彩図鑑』は運良く大賞を受賞し、2021年5月に出版の夢が実現したのです。
大賞受賞を契機に、翌年の2022年には続編となる2冊目の『百色図鑑』を、さらに2023年には3冊目の『四季彩図鑑 雨と風と光の名前』を続けて出版することができました。
これは最初のきっかけを掴むのに成功したからに他ならず、とても感慨深いことです。
写真撮影が趣味の人であれば、いつか自分の写真集を出してみたいと思われる方も多いのではないでしょうか。
しかし、思っているだけでは道は開けません。夢はいつまで経っても夢のままです。目的を持って努力を継続することは重要なこととは思いますが、自分の「好き」なことを具現化するためにはチャンスが必要です。
『写真出版賞』は、まさに夢を実現するための大きなチャンスです。この機会に皆さんもぜひチャレンジしてみませんか?
同じ写真を愛する人間として、心が震えるような素敵な作品に出会えることをとても楽しみにいたしております。
〈 写真出版.comからの質問 〉北山さんの肩書きは何ですか?
「四季彩写真家」でしょうか。写真を通じて、日本に古くから伝わる伝統色や事象を表す四季折々の「やまとことば」、雅語などを紹介していきたいと考えています。
テツヤハシモトさん(第1回写真出版賞)
自分は写真家であると思って活動していますが、常に高い熱量を持って創作意欲をキープするのは難しいことです。
一般社会には写真家であることを保証する資格やライセンスなどはないため、創作活動に行き詰まったときは、自分のアイデンティティーが揺らぐこともあります。
そんな時に心の支えになってくれたのは、「自分の著書がある」という事実でした。スランプに陥ったときでも、この世に自分の名前がついた本が存在していることによって勇気づけられ、写真家であることを再確認させてもらえました。これは、クリエイターとして、とても幸せなことです。
とはいえ、本を出版するという作業は、そう簡単にできることではありません。しかし、そのチャンスを与えてくれるのが、写真出版賞です。自らの作品集・写真集を出版したいと思う写真家に、夢と希望を与えてくれるコンテストだと思います。
自分の本が書店に並んだり、Amazonで買えるなんてワクワクしませんか? 是非皆さんも、そのチャンスを掴んで下さい。
〈 写真出版.comからの質問 〉テツヤハシモトさんの肩書きは?
SNSや著書の自己紹介などにも書いていますが、私の本業は臨床心理士(公認心理師)です。なので、肩書きとしては、「写真家/臨床心理士(公認心理師)」のテツヤハシモトと名乗っています。 そういう意味では、すでに「好きなことを肩書きに」していると思います。 私の場合、心理士として培ってきた経験を写真に活かし、写真で学んだ感性を心理士の仕事に活かしていると思っています。流行りの言い方ならば二刀流ということになるかもしれませんが、この二刀流のおかげで、どちらの仕事も相互に生きている気がします。
バオメイさん(第2回写真出版賞)
最初に、『have fun』を東京で出版した私の経験をみなさんにシェアできるのが本当にうれしいです。
きっかけは、当時、東京に住んでいる友人の洪十六がこのコンテストの情報を見て、私に応募を勧めてくれたことです。
私は洪にモノクロ写真のシリーズを送り、応募をサポートしてもらいました。
しばらくしてから、大賞と審査員特別賞を受賞したという結果発表を受け取りました!
すごくうれしかったし、びっくりしました。
とくに審査員の方々からもらった言葉は、励みになりました。
あぁ、なんてこった、だれかが私の写真を理解してくれるなんて!
本が出版された後、私は中国の読者たちにシェアするために本を少部数手に入れ、日本の新しい友人たちの注目も集めました。
一連の経験で、自分自身だけじゃなく、このユニークな写真たちにもチャンスを与えられたんじゃないかと思います。
最後になりますが、もう一度東京に戻りたいです。
そして、もっとたくさんの友達と写真を交換したり、一緒に楽しみたい!
〈 写真出版.comからの質問 〉バオメイさんの肩書きは?
「World Wander」世界を歩く人です。