写真出版.com
2019/05/20
3月末、第1回写真出版賞の最終審査が行われました!
ここでは、エンターテインメント部門の審査員のコメントを掲載します。
受賞した方のみならず、応募した方、第2回以降応募予定の方もぜひ参考にしてくださいね。
~最優秀賞~
太田裕史「永遠の富士山~いつまでも語り継ぎたい富士山~」
・富士山を真正面から撮った写真集。予定調和に引きずられそうになるところをよしとするが、ここには新しい発見が潜んでいます。多くの富士山を鑑賞した人たちにマッチした作品集になるだろう。インバウンドやファンをターゲットにして多くの人に手に取ってもらえる写真集にできればいいと思います。
・富士山に外連味(けれんみ)なく対峙していて、その表情を真正面から撮影していて素晴らしいです。
・すそ野を美しくたたえる富士山の存在は世界でも稀有(けう)で日本人の心のよりどころとして絶対的な価値を持っています。その富士山を世界遺産にも貢献したカメラマンの絶景集として価値があると思いました。
~優秀賞~
美々野ゆめさ「ビビのさんぽみち」
・手作り感にあふれていて、とても楽しい作品。文章に頼りすぎている部分と全体的にもう少し工夫があると嬉しいです。手作りの楽しさは十分に伝わってきます。
・日常の中の輝きを上手にとらえている作品。私にはとらえられないような小さな輝きもとらえられていて、それがこういう作品に定着しているのはすごいことだと感じます。作者の日常的な行動半径の中で、これだけ広い世界とつながりを持てており、言葉も開かれていて、読者に影響を与えるような作品です。表現の姿勢としてとても好感が持てました。「恵みの雨」のページは涙が出そうなほど感動しました。なんでもないともいえる写真ですが、この位置に持ってきたことによって、このような言葉と一緒に表現する。そうすることで、見えないものも映ってくる。作者の感性の確かさを表していると思いました。いろいろと手直しは必要ですが、良い本になるイメージができました。
・散歩道とされているので、個人的にはもっと俯瞰的に見て、ご自身のワールドを広げたほうがいいと感じました。写真絵本的な試みをしているので、イラストとしてマッチングしても面白いかと思いました。もう少し写真自体にオリジナリティーがあったりすると、言葉もおのずと説明的にならずにいいのかな、と思います。
オリンパス「人生を語る1ページ」
・ストレートでまじめなコピーと、意図していないにもかかわらずどこかポイントがずれている奇妙な写真の微妙な感じが面白いです。
・いきいきとした楽しさがあります。飽きさせない企画性や言葉がとてもいいです。編集者とさらに作りこんでいけば、面白い本になるでしょう。
・「こんな写真を撮ってみたら面白いかも」というモデル写真だったら面白かったかも。もう少しイマジネーションが湧くよう工夫してもらえたらよかったかも。
~奨励賞~
パパカメラ「しあわせ家族を作る魔法の撮影レシピ」
・いい企画だと思います。映っている家族の表情や背景、関係なども良く描けています。新しい家族の記念写真の在り方を示しています。読んだ人が真似したくなる指南書としてもいいと思います。さらなるアイデアが本に盛り込まれれば、よりよくなるでしょう。
・さまざまな危機をはらむ現代において、このようなモチーフ・構成・テーマは少し受け入れがたいかも。
・企画・狙いは良いと思いますが、すでに同じようなレシピ集はたくさんあるので、もう少しアイデアに工夫を盛り込めるといいと思います。